『八甲田山死の彷徨』新田次郎(新潮文庫)

 

 今から遡ること48年前の1977年、私は中学1年生でした。芸術鑑賞ということで、全校生徒がぞろぞろと隊列を組んで学校から街中の映画館まで歩き、『八甲田山』という映画を観ました。確か文部省推薦映画だったと思います。

 

厳冬の雪山で兵士が次々と遭難する恐ろしい内容でしたが、人間の尊厳にも触れた気がして心揺さぶられました。多感な時期であったせいもあり、すぐに本屋に走って原作である『八甲田山死の彷徨』を読みました。そして新田次郎のファンとなり、中学時代にほとんどの作品を読みあさりました。

 若き日の私を感動させたその本のあらすじは…。

 

時は今から124年前の1902年(明治35年)、日本陸軍はロシアとの戦争に備え、青森県八甲田山の雪中行軍演習を計画します。青森歩兵第5連隊と弘前歩兵第31連隊の大尉が呼ばれ、ともに工夫し競い合って演習を行うよう指示されます。

 その結果、青森5連隊は210名編成で青森-田代間往復40キロの行程を12日で歩く計画を、弘前31連隊は38名編成で弘前を出発して八甲田山麓を経て弘前に戻る約220キロを1112日で歩く計画を立てます。

弘前31連隊は120日、青森5連隊は123日にそれぞれの駐屯地を出発します。人数も行程もまるで異なるそれぞれの隊の運命は…。

 青森5連隊は猛吹雪の山中で彷徨状態となり、ほとんどの兵士が凍死(199名が死亡。うち6名は救出後死亡)するという歴史上未曾有の山岳遭難事故となりました。一方、弘前31連隊は雪地獄を突破し奇跡の全員生還を果たします。何が生死を分けたのか。ぜひ本書をお読みいただければと思います。

 

 映画では、高倉健や北大路欣也、三國連太郎、丹波哲郎、加山雄三、森田健作、緒形拳、栗原小巻、加賀まりこ、秋吉久美子などそうそうたる役者が揃い、音楽も(芥川也寸志が担当。芥川龍之介の三男です!)素晴らしいので、機会がありましたらぜひご覧ください。

 

ただ、子供には刺激が強すぎるようです。私の息子や娘がそれぞれ中学1年生になったときに、私同様に感動するだろうと思ってわざわざDVDを借りてきて見せようとしたことがありました。しかし2人とも「怖すぎる~」と途中で席を立ってしまい、結局私一人で見ました…。

 

日本は今、大変な豪雪に見舞われているようです。八甲田山も今頃は当時さながらに豪雪に埋もれていることでしょう。日本に帰ったらいつか八甲田山中に立つ雪中行軍遭難記念像をお参りに行きたいと思っています。

八甲田山死の彷徨