『ナミヤ雑貨店の奇蹟』東野圭吾(角川書店)
先日、たまたま休み時間に講堂の本棚の前で、S5の男子に「どんな本を読んでいるの?」と尋ねたことがあります。その子は東野圭吾が気に入っているということでした。私は昔、東野圭吾の「さまよう刃」や「秘密」を読んで切なく暗い気持ちになったことがあり、それ以来敬遠してきた作家でした。それに小学生が読むのには少々教育上好ましくない表現や内容が含まれているのではないかと危惧してしまいました。
同意しかねていると「これ面白いですよ」と言って、本棚に並んでいた「ナミヤ雑貨店の奇蹟」を指さしました。そこまで言うなら、と借りて読んでみました。
結果、面白かったです!
土日の2日間で一気に読んでしまいました。
荒唐無稽でファンタジックな内容でしたが、人生を切り拓いていくとはどういうことなのかを普遍的に考えさせられました。
物語は「ナミヤ雑貨店」と「児童養護施設:丸光園」を軸に、様々な人物がそれぞれの悩みをナミヤ雑貨店に寄せます。不治の病に冒された恋人とオリンピック出場を目指す狭間に揺れる女性。ミュージシャンを目指すも芽が出ず、頑固な父親との確執に悩む男性。破産して夜逃げを図る両親の許から逃げ出した少年、などなど。
ナミヤ雑貨店に悩みを書いた手紙を投函し、その回答を受け取った後の行動は、人それぞれでした。忠告通りに行動した人もいれば、そうしない人もいました。ただ共通していたのは、ナミヤ雑貨店の回答に感謝していたということです。
この本を薦めてくれたS5の子と私は、ちょうど50歳離れています。多分この本を読んで感じたことは大分違うのではないかと思いました。私はどうしても親としての視点で読んでしまいましたし、ビートルズの「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」のジャケットのエピソードはすごく心に沁みました。また、イエロー・マジック・オーケストラや、モスクワ・オリンピックのボイコットの話は、自分の中高校生時代のことなので、当時の様子がありありと思い浮かんできました。こうした時代背景や空気感は、今の小学生には分からないと思います。
しかし、そうしたことを抜きにしても面白いと感じられる作品でした。
何よりもその子が勧めてくれなかったら、私は一生、この本は手に取らなかったことでしょう。この本を読まないのは、ちょっと大げさかもしれませんが人生の損失だとさえ言えます。
その子に感謝です。まさに小学生に教えられたと思いました。間もなく、今の若い子たちの時代になっていきます。時空を超えて互いに繋がり合い、未来を拓いていくこの作品のように、明るい希望をもたらしてくれたかけがえのない1冊になりました。